今週末はいよいよコロンビア大統領選挙だ。引き続きグスタボ・ペトロ(Gustavo Petro)候補が高い人気を誇っている。イングリッド・ベタンクール(Ingrid Betancourt Pulecio)とルイス・ペレス(Luis Perez)は最近立候補を取り下げた。
グスタボ・ペトロは調査で相変わらず35-40%程度の支持を獲得している。対抗馬として見られているのは次点のフェデリコ・グティエレス(Federico Gutiérrez)ではあるが、ここにきて3位はロドルフォ・エルナンデス(Rodolfo Hernández)の支持がここ最近急速に増えている。Semanaが行った5月13日から19日にかけて行った最新のCNC(Centro Nacional de Consultoría)世論調査によると無党派層の投票意思が大きく好転した結果だが、もはやロドルフォ・エルナンデスが19.1%と2位のフェデリコ・グティエレス 20.8%とほぼ同等になるところまで来ている。前ブカラマンガ市長の目覚ましい成長ぶりは「彼のメッセージが国民に伝わっていきているのと同時に、彼の言っていることに共感していることを示している結果だ」とCNCのマネージャー、カルロス・レモワン(Carlos Lemoine)は言う。
4位セルヒオ・ファハルド(Sergio Fajardo)4%、最下位のジョン・ミルトン・ロドリゲス(John Milton Rodríguez)とエンリケ・ゴメス(Enrique Gómez)はともに1%程の支持となっている。なお歴史的盟約(Pacto Histórico)のグスタボ・ペトロは同調査では35.8%という結果だった。なおこの調査は全国104の市町村で4,412人を対象に行われた。3,780人が対面でのインタビュー(86%)、残りは電話を通じて回答したものだという(誤差1.5%)。また、白紙投票が5.7%、わからない・答えないが9.9%で、未定が16%近くまだ占めている。
政治憲法第190条によると大統領候補が第1ラウンドで勝利するためには、半数プラス1の票を獲得しなければならない。また過去3回の大統領選挙の時同様1回目で大統領が決まらなければ「3週間後に新たな投票を行い、その際、最高得票数を得た2人の候補者だけが参加する」ことと憲法で義務づけている。1,960万人が参加した4年前の選挙結果を考慮すると、大統領候補のいずれかが第1ラウンドで勝利するためには980万票以上が必要であると考えられている。
30年以上にわたりコロンビアの武力・政治紛争を調査してきたジャーナリストで政治学者のオルガ・ベハール(Olga Behar)は今回の投票において国民は2つのビジョンからどちらかを選ぶことになる述べる。つまり汚職スキャンダルや人権侵害を無視した排他的で新自由主義的な伝統的な考えか、経済・政治・社会モデルの革命を目指すかだ
フェデリコ・グティエレスは、イバン・ドゥケ(Iván Duque)の影響を受けている。そのため暴力、失業、経済危機、腐敗といった問題にはあまり精力的ではないとされている。4年前のドゥケのように、グティエレスへの確かな支持がないのは、こうした理由からだろう、そうべハールは分析する。なおアルバロ・ウリベ(Álvaro Uribe Vélez)、アンドレス・パストラナ(Andrés Pastrana Arango)といった元大統領たちは公共の場に姿を現していないという。一方元大統領で自由党党首のセサル・ガビリア(César Gaviria)は、選挙当日まで街頭に出て候補者の手を取り、新たな票の獲得に努めると発表している。
一方、選挙戦が始まって以来、すべての世論調査で大統領候補として有力視されているのはグスタボ・ペトロである。元ゲリラのペトロは、今回で3回目の挑戦となるが、汚職と正面から対決する、医療を改革するなど多くのアイディアを持っている。とは言っても第一回投票で当選を確実できるほど有権者を魅了できているわけでもなさそうだ。過去の選挙ではペルーのペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)の時のように、ベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Rafael Chávez Frías)的、過激なテロリスト、カストロ主義だと非難されてきた。しかし今日の彼は、ミチェル・バチェレ(Verónica Michelle Bachelet Jeria)や ホセ・ムヒカ(José Alberto Mujica Cordano)のように国の現実を慎重にかつ深く分析した結果の政策を持ち、また、彼が所属していたゲリラ組織(M-19)が動員解除後に当時のコロンビアの全ての伝統政党とともに作成した、保証的かつ包括的な憲法に完全に呼応した人物とベハールに評価されている。他者からのペトロへの恐怖心は、威圧的で頑固、時に過剰なまでに反抗的という彼自身の性格にも基づいている。このハンディキャップを克服するために、彼のアドバイザーたちは懸命に働きかけ、今日の彼はずいぶんリラックスし、融和的になったように見えるという。
La corrupción en Colombia es una articulación entre política y crimen.#YoVotoPetroPresidente pic.twitter.com/w2XswdULSy
— Gustavo Petro (@petrogustavo) May 28, 2022
ペトロはコルドバ(Córdoba)州シエナガ・デ・オロ(Ciénaga de Oro)で62年前に生まれた。ベロニカ・アルコセル(Verónica Alcocer)と結婚し、5人の子供を持つ。エクステラード大学(Universidad Externado de Colombia)、ハベリャナ大学(Pontificia Universidad Javeriana )、ベルギーのルーバン・カトリック大学(Universidad Católica de Lovaina)、スペインのサラマンカ大学(Universidad de Salamanca)で経済学や行政学などの専門的な勉強をしてきた。
左派の大統領候補は、1970年代から1980年代にかけて、M-19として親しまれている都市ゲリラ4月19日運動(Movimiento 19 de abril)の一員でだった。1985年、陰謀罪で投獄され、有罪判決を受けた。1987年に釈放され、以来、コロンビア政府との和平交渉に携わっている。動員解除と合意の後、ペトロは他の動員解除された戦闘員と共に政党 民主主義同盟M-19(Alianza Democrática M-19)を設立した。1991年の憲法起草に協力し、同年、コロンビア下院議員に就任した。
上述した通り今日の選挙戦では2人の主要候補者と、その他の4人には大きな支持の差があった。しかしここにきて3位だった無所属(右派)のロドルフォ・エルナンデスが支持を急速に伸ばしている。第1回投票で当確が出ないだろうことを鑑みれば敗れた陣営に投票していた人々が誰を支持するかによって、勝負の行方が変わってくる。
国防省のディエゴ・モラノによると同国の少なくとも8つの県で、違法武装集団(FARC反体制派、ELN、Clan del Golfo)が選挙で住民を脅している。具体的にはアンティオキア(Antioquia)州、ノルテ・デ・サンタンデル(Norte de Santander)州、チョコ(Chocó)州、バジェ・デ・カウカ(Valle del Cauca)州、メタ(Meta)州、カウカ(Cauca)州、ナリーニョ(Nariño)州、ボリーバル(Bolívar)州の29自治体であり、非合法武装集団が住民を脅している。大臣は標的になった自治体やた村にける脅迫が現実化しないよう、また、住民が安心して自由意志のもと投票できるようすでに30万人の軍人と警察官を特に治安が乱れる可能性のある国内50の自治体に重点を配置したと述べている。
次期大統領を決めるための第一回選挙は5月29日に行われる。いずれの候補者も50%+1票を得られなかった場合は、6月19日の決戦投票結果を待つこととなる。新大統領は8月7日に就任する予定だ。国民登録簿と国民選挙評議会によると、3800万人以上のコロンビア人が、全国にある112,897の投票所で投票することができる。投票は29日(日)午前8時から午後4時の間に行われ、同日午後6時頃には速報が出される予定だ。
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参考資料:
1. En ocho departamentos se ha presentado constreñimiento electoral: Mindefensa
2. Encuesta Elecciones Colombia 2022: Gran sorpresa en el último sondeo del CNC para Semana
3. Opinión Colombia, las elecciones y las opciones antidemocráticas
4. Elecciones presidenciales de Colombia 2022: candidatos, cómo consultar el puesto de votación y cuándo votar
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