ゴゴ(カレンジン語でおばあちゃんの意味)として親しまれているプリシラ・シチエニ(Priscilha Sitienei)は94歳のおばあちゃん。75年間彼女は助産師として働いてきた。子供は3人、孫は22人、ひ孫は52人いる。ゴゴはひ孫の中に学齢期を迎えているの学校に通っていない子たちがいることを知る。それに危機感を覚えたゴゴはひ孫娘3人とともにリーダーズ・ヴィジョン・プリパラトリー・スクール(Leaders Vision Preparatory School)に通うこととした。ゴゴ自身は学齢期に学校に通っていない。ゴゴが子どもの頃は女の子が学校に行くような時代でもなかったし、家からも出られるような時代でもなかった。だからゴゴは読み書きができない。彼女の幼少期には家で牛の世話をしていた。良い、悪いではなくそういう時代だったのだ。それでも彼女は知っていた、学ぶことの大切さを。
だからゴゴはひ孫たちと一緒に学校に通うことを決めた。子どもたちに教育の大切さを伝え、自分が頑張る姿を子どもたちにみせるために。学校の中で間違いなく最年長の生徒は子どもたちと肩を並べて座り、同じテキストを使い、同じユニフォームを着て、そして寄宿舎でも子どもと一緒に過ごした。
ゴゴは数学、英語のみならず体育、ダンス、演劇、歌など、すべての授業に出席している。それだけでは無い。長時間スクールバスに乗りマサイマラへ修学旅行にだって行った。この旅がゴゴにとって生まれ育った小さな村から出る初めての機会となった。マサイマラではキリンにもライオンにも出会えた。マサイの人たちの住む村では子どもたちに暖かく迎えられた。ゴゴの住むリフトバレー(Rift Valley)にあるンダラット(Ndalat)の人々と、マサイの人々とでは文化が違う。教育への考え方についてもそうだ。マサイでは結婚しても女性は勉学を続けるが、ゴゴの村では違っている。そんな事実をマサイの村で初めて知った。ゴゴは修学旅行を通じて、今一度子どもたちに学問を続けさせるよう啓蒙が必要だと感じた。
英語よりもカレンジン語で話すのが好きな彼女は「聖書を読めるようになりたいし、子どもたちに教育を受けさせたい」と考えている。「世界中の子どもたち、特に女の子に言いたいのは、教育が自らの財産になるということ。(…)教育があれば、医者、弁護士、パイロットなど、なりたい職業に就くことだっててきるのだから」、そう言葉を続ける。ゴゴが学校に通って頑張っているのだから、みんなだって頑張れるのだと言うことを身をもって教えてくれている。何事も「遅すぎることはない」。
ゴゴの依頼で建設された寄宿舎は300名の女子生徒に学ぶためのきっかけをくれる。寄宿舎はゴゴにちなんで名付けられ、そこには「Education has no age limit(教育に年齢制限はない)」と書かれている。
とても強そうなゴゴでも、白内障の影響で挫折しそうなることだってある。事実文字がろくに読めないのだ。そんなゴゴをみんなは励まし、支えてくれた。白内障手術は今一度ゴゴに活力を与えてくれた。当面の目標は小学校を卒業することだ。英語だって算数だって動物の鳴き声だって、まだまだ覚えなきゃいけないことだらけだ。でもきっと卒業出来るだろう。何故なら強い意志がそこにはあるからだ。努力が実らない事は無い。思いが伝わらない事は無い。粘り勝ちで行こう、そう、寄宿舎を建てた時のように。
「少女たちが幼い頃に子どもを産むと、恥ずかしさや続ける勇気がないために学校教育をやめてしまうのを目の当たりにしてきた。私は彼女たち、特に孫娘のやる気を引き出すために学校に通う。彼女たちだけでなく、学校に通っていない世界中の女の子たちのお手本になりたかった」。「教育がなければ、あなたとニワトリの間に何の違いもない。そしていつしかあなたはアルコール依存症になり、性的虐待を受けるようになるだろう。教育、教育、教育。それは永遠にあなたの心と脳の中に存在し続ける。いつまでもあなたの道を導く光となるのだ」。ユネスコが主催する国際識字デー記念式典(2021年9月8日)でも、彼女は国際社会に対して教育の大切さを語った。
参考文献:
1. Kenyan grandmother at school with her great-great-grandchildren
2. Meet Gogo, the world’s oldest primary school student from Kenya
作品情報:
名前: GOGO(ゴゴ)94歳の小学生 (原題:Gogo)
監督: Pascal Plisson
脚本: Pascal Plisson
制作国: France, Kenya
時間: 84 minutes
ジャンル: Ducumentary
※日本語字幕あり
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