エクアドル:ロシアのウクライナ侵攻によるバナナへの影響

(Photo by César Muñoz/API)

ロシアによるウクライナ侵攻はあまりにも不条理と不正義である。戦争に勝者などが出るわけもなく、何も生み出さないどころか、多くの人を奪われ、思い出や歴史に満たされた街も跡形もなく崩れ去る。少し前まで笑顔で満たされていたはずの土地は悲しみに包み込まれ、仲の良かったはずの隣人は突如として憎しみの対象となる。誰が綺麗事を言ったところで侵攻、戦争は悪でしかない。兵士のみならず、民間人、動物もまた殺戮や攻撃の犠牲者となる。一度失われた命は決して取り戻せない。全く正統化できるわけもないそのような横行を我々国際社会は一丸となり一刻も早く停止させなければならない。

現代のグローバル化した世界における戦争は当事者間のみの問題ではない。ウクライナにおいては甚大が犠牲と人道危機がもたらされているが、世界経済全体も成長減速とインフレ加速の影響を受けることとなる。ウクライナやロシアは主要な一次産品輸出国ということもあり、石油や天然ガスを中心に国際価格が急騰している。

エクアドルのバナナマーケティング・輸出協会アコルバネック(Asociación de Comercialización y Exportación de Banano:Acorbanec)の調査によると、ロシアによるウクライナ侵攻で100万箱以上のバナナが両国に輸出されることなくエクアドルにとどまった。エクアドルにおける主要輸出産品であるバナナは、同国の中小農園にも支えられている。政府は戦争で影響を受けているバナナ生産者や輸出業者に対して補償措置を提示したが、関係者を納得させるに至らなかった。パチャクティック(Pachaktic)のヤク・ペレス(Yaku Sacha Pérez Guartambel)などは政府がこれらの人々を支えられなければ、産業を支えることができなくなると警鐘を鳴らしている。関係者は共和国大統領との直接会談を求めるとともに、ロス・リオス(Los Ríos)県、エル・オロ(El Oro、Los Ríos)県、グアヤス(Guayas)県の生産者たちは、バナナの房をバリケードに、月曜日プエルト・インカ道路を閉鎖した。大統領にこの分野の緊急事態を宣言するようも要求している。

 

バナナストライキは政府が要求に対して納得する回答をだすまで続けられるという。この分野では、海運コストの上昇、コンテナ割当量の減少、肥料価格の上昇、そしてコロンビアやペルーに生息し作物を枯らすフザリウムR4T菌の感染の恐れなどで頭を悩ませていた。これに加え、2月24日の紛争開始以降、エクアドルのバナナ生産量25%を輸出するロシア、ウクライナへの需要が減少した。これによるエクアドルのインパクトは5万人の直接雇用と最大25万人の間接雇用とされている。エクアドルの田舎では、バナナ産業が主な雇用源となっている。統計によると紛争の影響を受けているのは約5万ヘクタールで、このうち61%が30ヘクタール以下の小規模生産者、25%が100ヘクタール以下の中規模生産者で構成されている。

政府は、原油価格の上昇により15億ドルの臨時収入を見込んでおり、小規模農業生産者向けの対策を分析する予定だが、一方でギジェルモ・ラッソ(Guillermo Lasso)大統領は、両国市場の喪失を理由に、政府がバナナを購入することを時点では否定している。また「金持ちは、ロシアのウクライナとの戦争で利益が減ったと泣きついて来るな、それは自分たちの問題だ…自らで調整すべきであり、これはビジネスをする上でのリスクだと理解すべきだ。戦争が彼らを襲えば、その打撃をどう解消すべきかを考えるべきである。国民の金は国民のためにあり、政府の友人4人のためのものではない」と大統領は、数日前にバナナ問題についてこう述べている。

https://twitter.com/acorbanec/status/1503813846896627715

 

生産者が死守したい要求としては設定されているバナナ箱(18kg)あたりの価格を維持することだ。農畜産省は2022年1月1日から12月31日までの価格を6.25米ドルに設定している。この金額は生産コストをカバーすることを目的としている。しかし、一部の企業が生産者に対して「公正な取引」をせず、中国や中東のバイヤーがそれを買い叩いている実態がある。これに対して政府は法律を尊重しない輸出業者には制裁だけでなく輸出許可の取り消しも行う予定であることを述べた。バナナ生産者は、供給過剰を抑制し、果物の価格を守るために、1日あたり約1万房のバナナを道路に運び、人々に配ることを示唆している。

ロシア軍に占領されたウクライナの港の閉鎖で黒海航路の利用は制限されている一方、ほとんどの貨物船は、ロシアへの迅速な航路を求めてヨーロッパの港で待機している。このため、エクアドル産バナナは、ロシアへ納品される予定だったものを迂回させなければならなくなった。ロシアからの輸入はもっと複雑で、多くの銀行が営業を停止しているため、輸出入品の代金の授受が困難な状況にある。ロシアはエクアドルの主な肥料供給国であることもあり、ここ数日その価格が上昇している。

トレスたちは、供給過剰と果実価格の投機を避けるため、中小の生産者から政府が房を直接買い取ることを提案しているが、上述の通り政府はその提案を非現実的とし拒否している。その代わりに政府は「私たちがしなければならないのは、世界の他の市場を見つけること」とし、ロシアのバナナ市場の喪失を補う可能性について、中国の陳豪用大使と会談をしたことを明かしている。また、BanEcuadorを通じた生産者向けの最大55,000ドルの融資枠も検討されているとした。なおアコルバネックのリチャード・サラサル(Richard Salazar)専務理事は、ロシアに行かないその分のバナナを他の仕向地に置くことはユートピアだと述べている。1月、エクアドルはロシアに810万箱のバナナを輸出しており、これはエクアドルのバナナ輸出の23.99%に相当するからだ。エクアドル・バナナ&プランテン・クラスターのコーディネーターであり、この分野の政府顧問であるフアン・ホセ・ポンス(Juan José Pons Arízaga)も政府によるこの言説の実践には難しさもあると語る。それは国によって規則や植物検疫が異なるからだ。ロシアに行く製品は、特定の殺虫剤を制限している欧州連合、米国、韓国、日本が定めた規範に準拠していないのだ。大規模生産者とは異なり、ロシアへ出荷しているバナナは品質シールや多くの認証を持たない単純な生産からもたらされる。だから小規模生産者がこの紛争で最も影響を受けると繰り返し述べた。

 

ロシアとウクライナの軍事衝突は、エクアドルの輸出品のうち3品目(バナナ、花、エビ)に被害を与えている、生産大臣フリオ・ホセ・プラド(Julio José Prado)、経済大臣シモン・クエバ(Simón Cueva)は会合を持ち、生産、雇用を維持し、希望を生み出すことができるような補償措置を可能な限り検討する予定である。

 

参考資料:

1. Medidas de compensación que analiza el Gobierno no convencen a productores y exportadores de banano que buscan diálogos directos con el presidente de la República
2. Gobierno estima ingresos extras no permanentes de $ 1.500 millones por aumento del precio del petróleo; analizará medidas para pequeños productores del agro
3. Bananeros piden el rescate de su sector
4. Más de un millón de cajas de banano no han sido exportadas debido a complicaciones por el conflicto entre Rusia y Ucrania
5. BanEcuador
6. ウクライナでの戦争が世界地域にどう影響しているか

 

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