施行後7年を経て「水資源、水の利用及び開発に関する法律(la Ley de Recursos Hídricos, Uso y Aprovechamiento del Agua、通称水法(Ley de Aguas))」は憲法裁判所から違憲と判断された。2014年に承認された法律は1年以内に修正される。作成にあたっては誠意ある立法のための事前協議(consulta prelegislativa)が社会組織に対して適用される必要がある。
違憲とされたのはラファエル・コレア(Rafael Correa)政権時代に承認され法律ものだ。当時与党だった国家同盟(Alianza PAIS:AP)が議会の大多数を占める中、2010年にこの文書の承認が試みられるものの、エクアドル先住民族連合(Confederación de Nacionalidades Indígenas del Ecuador:CONAIE)を中心に、内容を拒否する強いデモが起こった。結果承認は見送られ、その4年後に政府はCONAIEの抵抗を受けながらも議論を再開、2014年7月31日にこれを承認、2014年8月6日に官報305で公表していた。2008年憲法で制定が1年以内に実施されるよう義務付けられていたものの、承認には至っていなかった過去もある。
今年1月12日に憲法裁判所によってなされた判決はCONAIEやエクアドル・キチュワ民族連合(Ecuador Runakunapak Rikcharimuy, “Movimiento de los Indígenas del Ecuador”:ECUARUNARI)をはじめとする先住民組織が、2015年5月31日に提訴したその違憲性に基づく。当時のCONAIE会長はホルヘ・エレラ(Jorge Herrera)であり、ECUARUNARIの代表はヤク・ペレス・グアルタンベル(Yaku Pérez Guartambel)だった。7人の裁判官の賛成票とともに、カルメン・コレア(Carmen Corral)とエンリケ・エレイア(Enrique Herrería)の反対票があったものの、その違憲性が認められた。裁判官たちは当時の立法円卓会議が協議の対象者を一方的に限定し、「先住民族の指導者によるいかなる種類の参加」も認めていなかったことを確認しており、その承認は憲法57条17項を遵守していないものであると同時に、国際労働機関(International Labour Organization:ILO)の制定する条約169の適用もない、つまり国際基準にも反するものだと判断している。
ただし違憲性を認めた一方で裁判官たちは、現在水資源当局(環境・水・生態系移行省)が進めているすべてのプロセスにおいて水に関する規制が欠落せぬようにと、現行法については1年間だけ有効と判断している。共和国大統領府に対しては、新しい条文の草案と、それを議会で処理するために1年の猶予を与えている。行政は新しい水資源法の草案を国民議会で話し合う前に先住民族との事前協議を行わなければならないとも裁定されている。
先住民の指導者は、この判決が農村や農民の草の根的な問題提起の機会になることを期待し、また、中小規模の開発の促進や、地域経済の維持に貢献する参加型で民主的な法律の制定を目指している。条文の作成は行政府に任されているが、立法前の協議を組織するのは議会であり、ペレスとエレラはここで「誠意」を示すことを期待している。彼らは現行法が「コミュニティから水の所有権を剥奪し、所有者ではなく利用者として扱って」おり、是正されなければならないポイントだ。また政府に対しては「コミュニティの世界観に敏感になり、水をビジネスにするような新自由主義的なビジョンを持っていないことを望んでいる」と述べている。この提案は2023年1月までに準備されなければならない。ペレスによると、水源地での金属採掘の禁止、コミュニティシステムの自治、水の非充当、国家水基金の創設など、国が「受け入れなければならない」テーマもあるという。
なお本法律で定められていた「市民参加・社会統制会議(Consejo de Participación Ciudadana y Control Social:CPCCS)」についても開催されていない。委員を任命することもなく7年6カ月が経過した。2015年にこの組織を統合する意向はあったものの、規程の作成もままならず、実現しなかった。法律によれば、本会議は「水資源の策定、計画、評価、参加型管理」をするために行われるもので、国家戦略的水システムの一部であり、メンバーには水源の流域に住む協議会や先住民、アフリカに起源を持ったエクアドル人、モントゥビオ、コミュニティーの飲料水と灌漑システム、経済部門のユーザー組織、公共サービスの消費者の市民組織、分権自治政府、大学の代表から選ばれた7人のメンバーで構成されることになっていた。委員の任期は2年で、水に対する人権の保障と行使に関する社会的統制、水資源に関する公共政策の立案・評価・統制への参加など、8つの権限を持つことになった。なお2019年に実施された統一地方選後に設置された現在の市民参加会議においても、年間計画の中に入っていない。
CONAIE現会長のレオニダス・イサ(Leonidas Iza)は、新法の草案に盛り込むべき問題を提起する全国大会の開催を呼びかけている。
Update:
3月9日、環境・水・生態系移行省は、水資源の統合管理のための新法作成にあたって、公平、公正、恒久的な公共またはコミュニティ、普遍的な水へのアクセスを保証するための参加型プロセスを開始した。エクアドルの人々にとって、水は権利であり、自然遺産であり、国の持続可能な発展のための戦略的な軸だ。市民とともに新水資源統合管理法が起草された後、法案は国会に提出され、議論と承認を得ることになる。上述の通り2014年に採択されたものは憲法裁判所によって違憲とされている。政府はこの判決を尊重し、新法制定時には、水の使用と利用に関して、人間の消費、食料主権を保証する灌漑、生態系の流れという優先順位を特に重視し、さまざまなセクターから生じるその他のアプローチやニーズを念頭に入れると発表している。エクアドルでは共和国憲法第318条でいかなる形の水の民営化も禁止している。
参考資料:
1. En doce meses una nueva Ley de Aguas entrará a debate de la Asamblea bajo la presión de los grupos indígenas
2. Más de siete años pasaron sin que el Consejo Plurinacional del Agua se integre
3. LEY ORGÁNICA DE RECURSOS HÍDRICOS USOS Y APROVECHAMIENTO DEL AGUA
4. La Corte Constitucional declaró la inconstitucionalidad de la Ley de Recursos Hídricos y su Reglamento
5. 南米エクアドル共和国の“水事情 ” 上下水道普及率は高いものの…滅菌処理しない水も
6. El agua es de todos los ecuatorianos
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