スウェーデンのサスティナブルファッション・ブランド「デディケイテッド（DEDICATED）」は次のコレクションでエクアドル産のタグアボタンの採用を決定した。COVID-19の影響もありその販売、輸出は減少し、その結果職人の中には生産活動を断念する人がいるなかでの、嬉しい発表となった。
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1988年以来、エクアドルはタグアの実から作られるディスク、ボタン、その他の製品の製造と商品化に注力してきた。この度ボタンを提供することになったマナビ（Manabí）に社を構えるトラフィノ（Trafino）は企業努力もあり現在は20カ国以上に顧客を持つようになっっている。トラフィノは、「エクアドルの遺産であるこの製品の普及を支援し、熱帯林の保護に貢献するとともに、5つ以上の州で野生のタグアの実を採取する数千人のコレクターと、それを加工する数百人の職人に収入を与えてくれている」とプロエクアドル（PRO ECUADOR ）に感謝を示した。プロエクアドルとは、エクアドルの輸出・投資促進政策と規制の実施を担当する対外貿易省の機関のことで、同国における伝統的・非伝統的製品、市場、関係者の供給を促進し、国際貿易への戦略的参入を促進することを目的としている。
Dedicatedは、2006年に設立されたスウェーデンのサステイナブルアーバンファッションブランドで、ブランド名は英語の「身を捧げた」「専門の」という意味。地球、地域の産業の持続可能性に身を捧げて注力するという思いが込められている。オーガニックコットンやGOTS（Global Organic Textile Standard）の認証を受けたリサイクル素材など環境負荷の低い素材を採用した洋服作りと、生産者の倫理的な取引関係も保証するフェアトレードをベースにビジネスを行なっている。価格は、Tシャツやブラウスが45ドル、シャツが89ドル、カーディガンやパンツが119ドル、ワンピースが139ドルなどだ。また、世界中の写真家、イラストレーター、アイコニックなデザイナーとのコラボレーションにより、高品質でもあり、地球環境や人権に配慮したエシカルなモノ作りを目指したユニークなコレクションを生み出している。
熱帯雨林に自生するタグア（tagua、象牙やし）は別名アイボリーナットとも呼ばれ、その柔らかい色目と繊細で美しい柄が特徴。完熟した種子の中身は象牙のように美しく、乳白色をしている。使い続けるほどに象牙のようにつやつやし、その後少しづつあめ色に変わっていくこともまた特徴だ。コロンビア、ペルー、ブラジルなどでも自生しているが、エクアドルは他の国と比べて最も生産量が多いとされている。また、19世紀末から装飾品や縫製などを用途としヨーロッパに原料輸出されている。実は地面に落下し時間が経つと、胚乳の部分が固くなっていく。ここがボタン作りの素材となる。植物象牙（Vegetable Ivory）とも知られるこの植物の有用性は実だけではない。ヤシの葉は屋根材にも使われるし、削りカスもまた豚の飼料になるなど、無駄がない。象牙の代用品としても使われてきたことを思えば、象牙目当ての象の殺戮も食い止められるかもしれないし、ヤシは森の防潮堤として、そして生物の住処にもなる。
タグアボタンを採用しているのはDEDICATEDのみならず、世界の有名ブランド（Giorgio Armani、Burberry、Max Mara、Marc Jacobs）をはじめ多くの企業が採用している。
4月28日にもスウェーデンのエクアドル大使館で、プラスチックボタンの交換を目的としたイベント「Replace plastic buttons」が開催され、アパレルブランドのハイレベルな代表が集まることとなっている。ここではトラフィノや他のボタンメーカーが、このユニークな素材の利点をデジタルで紹介する予定だ。タグアの実は着色し利用することもできるから、用途も広い。
タグアの実を使って制作されるのはボタンに限らない。民芸品もまたこれを素材に作られる。持続的な成長が盛んに叫ばれている今、伝統として脈々と受け継いできた素材、技法は豊かな未来への掛橋ともなるだろう。
参考資料：
1. Marca sueca usará botones de tagua ecuatoriana en su próxima colección de ropa
2. PRO ECUADOR
3. DEDICATED.jp
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