ホンジュラス:マリア・エレナ・ボッタッツィ、ノーベル平和賞候補にノミネート

(Photo by Baylor College of Medicine)


ホンジュラスの微生物学者で科学者のマリア・エレナ・ボッタッツィ(María Elena Bottazzi)は、世界にいる最貧困層の人々にcovid-19ワクチンを届けることを目的とし、特許権のないワクチンの作成をしている。この功績が認められノーベル平和賞候補にノミネートされた。

 

テキサス州選出のリジー・フレッチャー(Lizzie Fletcher)下院議員は、ホンジュラスのボッタッツィ博士とピーター・オテツ(Peter Hotez)博士のCOBID-19に対するワクチンの開発と提供の取り組みについてのノルウェー・ノーベル委員会に推薦の手紙を送った。

ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)国立熱帯医学学部(Escuela Nacional de Medicina Tropical)の学部長であり、テキサス小児病院(Texas Children’s Hospital)のワクチン開発センターの共同ディレクターである科学者たちは、このウイルスに対する安価な接種剤CORBEVAXを作った。注目すべきは、全世界で特許をきにすることなく入手可能であることだ。

世界中の人々がCOVID-19の大流行という課題に直面している中、特許の制約を受け自らワクチンを作ることができなかったり、その価格からワクチンを入手できないなど世界では不平等が起きている。ワクチンを餌に各国との関係強化を狙う外交手法「ワクチン外交」と言う言葉も頻繁に耳にする。2021年末オーストラリアのシンクタンク、ローウィー国際政策研究所(Lowy Institute for International Policy)が発表した「アジア・パワー指数(アジアでの相対的な影響力を示す)」によるとワクチン外交の強化でバイデン米政権がその影響力を拡大して2位中国と差を広げている。新型コロナウイルス感染対策のワクチン支援による外交影響力は15.5ポイント上昇した。同研究所は「バイデン効果」と呼んでいる。中露ばかりが取り沙汰されているが、米国だってそう。ワクチンからの恩恵を受けようと皆血眼になっているのだ。なお、中国はホンジュラスとパラグアイと言う国交を持たない両国に対してワクチンを餌に台湾との断交を迫っている。台湾蔡英文が政権を率いるようになった2016年以降、中国の外交攻勢でパナマ、ドミニカ共和国、エルサルバドルの中南米3カ国を含む計7カ国が台湾と断交している。台湾が外交関係を維持するのは、中南米の9カ国を含めて計15カ国しかなく、2021年12月9日にニカラグアは中国との国交を再開した。

パラグアイは台湾との63年にわたる同盟関係を持つ。反共産主義の大統領アルフレッド・ストロエスネル(Alfredo Stroessner Matiauda)と蒋介石がアスンシオンと台北で統治していた時代にさかのぼる。その両国関係はパラグアイに中国のワクチンを直接購入できない状態にし、結果台湾との断交を検討せざるを得ない状態になった。政府関係者から、ワクチン必要量の確保のために北京に切り替えるよう打診されていることもわかっている。中国共産党は、台湾を自国の領土とみなしている。だから台湾を独立国と認める国々を敬遠している。台北政府は北京の主張を否定し、台湾はすでに事実上の主権国家であると主張している。

チリ・カトリック大学(Pontificia Universidad Católica de Chile)アジア研究センターのフランシスコ・ウルディネス(Francisco Urdinez)研究員は、「台湾が同盟国を失うにつれ、中国の主張はますます正統性を増している」と指摘する。「もしどの国も台湾を認めなければ、中国が台湾の領有権を取り戻すのはずっと容易になるだろう」と述べた。

世界で台湾との断交が中国製ワクチンの入手の前提条件であることをほのめかされたと言うリークが出た時、中国はそれを「悪意ある」誤報と呼んだ。一方、台湾は「一部の関係者」が「政治的操作」のためにワクチンを使用していると非難した。しかし中国をここまで強気にさせているのは、その資金力であり、他国、例えば米国が開発しているワクチンの高価さ故である。

ボッタッツィ博士は、開発したワクチンは誰でも複製でき、誰でも一緒に仕事ができると述べている。現在、ボッタッツィのチームは、インドネシア、バングラデシュ、ボツワナといった国々で、このワクチンの製造について交渉をしている。ホンジュラス産ということで、特に中米で生産し、中米全域に流通させることをチームは強く希望している。

CORBEVAXは、リコンビナント・プロテインと呼ばれる伝統的な技術に基づいている。この技術は、例えばB型肝炎などのワクチンで、すでに何十年も前から有効性が証明されている。ウイルスに含まれるタンパク質を十分に利用することで、免疫反応を引き起こすという仕組みだ。なお米バイオ医薬品企業ノババックスの新型コロナウイルスワクチンでも採用されている。インドで行われた第3相試験 (18~80歳の3000人以上を対象)では従来株の発症を90%以上を予防すること、そしてその安全性と忍容性、免疫原性が確認された。なおデルタ株の発症は80%以上予防する。また、2回接種から6カ月経過後の血清中和抗体価の幾何平均値(GMT)の減少は30%未満で、免疫応答を高く持続していることもわかっている。インドではその有効性から2021年12月28日に医薬品管理局(DCGI)が同ワクチンの緊急使用を許可した。2022年2月以降、同国製薬会社バイオロジカルE(Biological E Ltd./BioE)は毎月1億回分の生産を計画しており、3億回分の供給をインド政府と約束しているる。また、追加で生産する10億回分以上のワクチンは国外にも供給していく予定だ。ファイザー社やモデルナ社が製造するメッセンジャーRNAワクチンなど、他のタイプのワクチンと比較し、よりシンプルで安価な製造工程もと特徴となっている。既存テクノロジーを活用することから生産施設はすでにあるし、メッセンジャー RNAワクチンのように超低温で保管する必要もない。

COVID-19 に対するワクチンを1回以上接種した人は世界で48億人を超え、世界人口の約62.5%となった。しかしそれを構成する人は高中所得国に住むものが8割、低所得国はわずか1割とワクチン格差はますます深刻な課題となっている。世界の不平等、自らの利権のみを追い求める人々に一石を投じるものとなることを期待している。

 

ラテンアメリカ地域ではキューバがAbdalaやSoberanaシリーズを開発、生産している。(詳細はこちら

 

参考資料:

1. Vaccines Reignite China vs. Taiwan Debate in Latin America
2. One of Taiwan’s Allies Weighs Embracing China for Vaccines
3. Houston vaccine researchers Dr. Peter Hotez and Dr. Maria Elena Bottazzi nominated by Rep. Fletcher for Nobel Peace Prize
4. CORBEVAX, a new patent-free COVID-19 vaccine, could be a pandemic game changer globally
5. Castro exalta a científica hondureña Bottazzi nominada para Nobel de la Paz

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