今年もまたベネズエラ映画祭がやってくる。2021年はオンライン(vimeo)での映画祭となることから、映画館に行かずしてみられるというメリットがあり、より多くの人たちがベネズエラ映画と接点を持てるという観点から期待している。
ベネズエラは「暴力」「独裁」「貧困」「汚職」と行った言葉と結びつけられがちだ。でももともと文化、社会が発達していた地域である。それゆえ優れた作品作りにも熱心だ。
頭に浮かぶだけでも素晴らしい、興味深い作品も多い。首都のカラカスのスラム街で暮らすシングルマザー家庭に迎えられた捨て子、後の天才ストライカーとその兄が直面する母の死を描いた「黙して契れ(HERMANO)」。2015年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を取った「彼方から(Desde allá)」。侵略者によってコミュニティを壊滅させられアマゾン流域のジャングルで1人生きるシャーマンを描いた「彷徨える河(El abrazo de la serpiente)」。パブロ・ナヴァレテ(Pablo Navarrete)は「革命の内側:ベネズエラ 心の旅路(Inside the Revolution : A journey into the heart of Venezuela 」を通じ、チャベス政権の内側を映した。
COVID-19がもたらした唯一(かどうかは後日検証されることだろう)のメリットは、デジタルテクノロジーを日常生活に近づけたと言うことだろう。働き方や学び方、趣味に費やす時間の使い方は変化し、映画祭も我々に自由度をもたらした。上述の通り本ベネズエラ映画祭、さらには山形国際映画祭もオンライン開催となる。映画は大きなスクリーンで見たいと言う人がいるのも確かだろう。大迫力の中で見る作品は格別だからだ。でも私は作品とより多くの接点を持つことができると言う観点から、オンラインでの開催に多大なる感謝の意を示すとともに、来年以降もハイブリットでの開催を期待したいと思う。
ベネズエラ映画祭は10月20日(水)から11月6日(土)に行われ、自分の都合の良い時間にインターネットにアクセスするという形式を取る。視聴料は1セット(映画1本+短編映画1本)につき500円と格安だ。また、映画祭の収益の一部は、ベネズエラの子ども達を支援する財団へ寄附され流。まさに一石何鳥とも言えよう。ベネズエラ映画に触れたことのない人は、是非この機会を見逃さないでほしい、そう思う。
上映作品は以下の通り。
Érase una vez en Venezuela
監督:アナベル・ロドリゲス(Anabel Rodríguez)
上映時間:99分
コンゴ・ミラドール(Congo Mirador)に住む人々の日常を描いた感動的なドキュメンタリー。「水の都」は気候変動と政治腐敗によって変貌していく。ベネズエラの西部マラカイボ湖の南に位置するスリア州にあるこの土地からは石油が採掘され、オイルマネーでこの国は潤っていた。でもその姿はもうない。チャビスタ、反チャビスタという二項対立も通じて今のベネズエラを見ることができる作品。ベネズエラ代表として2021年のアカデミー賞の「最優秀国際映画賞」と「最優秀長編ドキュメンタリー賞」にノミネートされるも候補にはならなかった。
Hijos de la Sal
監督:ルイス・ロドリゲス アンドレス・ロドリゲス(Luis y Andrés Rodríguez)
上映時間: 103分
死を目前にした老人が、子供たちに遺体を火葬して灰を海に撒くことを頼む。通過儀礼のように老人の最後の願いを叶えようとする若者たちは、知らず知らずのうちに村の伝統を踏み越えてしまう。舞台はベネズエラの地理の中でも非常に特殊な風景であるファルコン(Falcón)州に位置するパラグアナ(Paraguaná)半島。青年の成長を描く。ベネズエラ映画祭で7つの賞を得た作品。
El Amparo
監督:ロベル・カルサディージャ(Rober Calzadilla)
上映時間:1時間39分
実話に基づく作品。1988年10月28日、コロンビアとの国境の町エル・アンパロ(El Amparo)、アラウカ川の峡谷で村人14人が殺害された。軍の主張はそれらの人間は武装しており、手榴弾、銃を使って攻撃してきたゲリラだった。20分にわたる戦闘から命からがら逃げ出し助かったのは漁師2名だった。村民は2人を匿うも、軍からの圧力は次第に強くなる一方だった。本事案については米州人権裁判所(IACHR)での裁判の後、1996年被害を受けた者の近親者や被害者に70万ドル以上の賠償金を支払うよう命じている。
◆◇短編映画◇◆
Eva
監督:フランシスコ・パレハ(Francisco Pareja)
上映時間: 14分
苦しさと孤独の中で日常生活を送る73歳の女性の物語。ミリアム・パレハが演じるキャラクターは、彼女の人生を決定的に変えてしまうように見える幻想のダークサイドに立ち向かう。
El Galón
監督:アナベル・ロドリゲス(Anabel Rodríguez)
上映時間: 10分
水上に建てられた村、コンゴ・ミラドール。漁師たちのガソリンタンクで船を作って遊ぶ子供達の物語。
Fe de vida
製作:セントロ・デル・モビミエント・クレアドール(Centro del Movimiento Creador)
上映時間: 16分
各国のの短編映画がコンペティション形式で上演されるCine-Arte en la Frontera 2021で最優秀撮影賞を受賞した作品。
Pasos
製作:ギルベルト・ポロ(Gilberto Polo)
上映時間: 2分
歩く姿は人生を映し出す。それを描く。
チケットの購入はVenezuelan Film Festival Japanから。
参考資料:
1. “‘Érase una vez en Venezuela, Congo Mirador’ pone el dedo en la llaga en el momento necesario”: el documental venezolano elogiado internacionalmente
2. Ganadoras del Festival del Cine Venezolano: ‘Hijos de la sal’ (Online) (Disponible en Películas de Impacto )
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