バルバドス(Barbados)は立憲君主制を廃止し、2021年11月30日に共和国となろうとしている。これに先立ち未来の大統領が指名された。バルバドス政府情報サービス(Barbados Government Information Service:BGIS)によると初代大統領はサンドラ・メイソン(Sandra Mason)の予定だ。2021年11月30日は、イギリスの植民地であったこの国が独立し、イギリスのエリザベス2世を国家元首とする英連邦に加盟してから55年目にあたる日だ。現知事はこの変革を発表するにあたり、完全なる主権化に向け「バーバディの人々はバーバディの国家元首を望んでいる」と主張していた。なお共和国となっても国名、国旗、公約、独立記念日の名称に変更はないことが保証されている。
8月21日、「バルバドスはバルバドス。我々はバルバドス連邦でもなければ、バルバドス共和国でもない」と、先週末、ミア・アモール・モットリー(Mia Amor Mottley)首相は将来の国家元首をサンドラ・メイソンに指名するとともに語った。首相によれば、今回の動きは、王政との決別や不敬によるものではない。
独立主義者であるモットリーはバルバドス初の女性首相であり、バルバドス労働党(Barbados Labour party)の党首でもある。15カ国で構成されるカリコム(Caricom)の議長を務めるなど、カリブ諸国の政治に大きな影響力を持っている。
正式にサンドラ・メイソンが大統領になれるかは下院と上院の国会議員の投票に委ねられることになる。なお独立の日までに達成されなければならないことは他にもあり、例えば政府憲章の作成も必要だ。そもそも共和制への移行には議会で3分の2以上の賛成も必要だ。とは言え、2018年の選挙で地滑り的な勝利を収めたバルバドス労働党は下院の全30議席を獲得している。人気投票でも70%以上の高い支持率を持つことから、イギリスの女王を国家元首として解任できる状態だ。共和国化に向けては国民投票が必須とされていないこともあり、行われる予定はない。
11月30日の独立記念日に大統領は新憲章を唱える。もちろん国民と議会がこの憲章に同意することが前提だ。この作成にあたっては共和党政権移行諮問委員会が、どのような約束や誓約をお互いに交わしたいかを検討しており、同委員会メンバーのジョン・ロジャース(John Rogers)上院議員とチェレダ・グランナム(Chereda Grannum)上院議員が主導している。新憲章は法律的でも司法的でもない言葉が用いられ2〜3ページの誓いと約束がまとめたものとなる。(予定)
2022年1月にはバルバドスの新憲法策定に向けた議論が開始される。首相によると憲法を「章ごと」に分解していくつもりで、1月に序文と基本的な権利、自由、責任に関する項目、その後、他の部分の作成に移っていくという。憲法策定に要する期間はおおよそ12ヶ月から15ヶ月だ。作成に際しては退役したシャーマン・ムーア(Sherman Moore)判事が支援する。法案策定のための事務局には、西インド諸島大学ケーブヒル校の学者シンシア・バロウ・ジャイルズ(Cynthia Barrow-Giles)やその他の専門家も参加する予定だ。
バルバドスとイギリスの関係は常に平穏であったものの独立は過去何度もチャレンジされていた。1949年に独立に向けた政治的変化が始まり、1961年にバルバドスは自治権を獲得。その後もバルバドス労働党の創設者であるグラントリー・アダムス(Grantley Adams)と英国政府は、独立に向けた交渉を行ってきた。1966年11月30日、イギリス議会でバルバドス独立法(c.37)が可決されイギリス連邦加盟国かつ英連邦王国として独立を達成した。英連邦からの離脱については1970年代にもそれを検討する委員会が設置されるも同委員会は独立を否認。1996年に行われてた同様の試みは、憲法の見直しが承認され国民投票が行われるも、法案が可決される前に、国会が解散している。
ウィンドラッシュ・スキャンダルや黒人運動の影響で、他のカリブ海の島々も追随するのではないかという憶測もある。カリブ海では、女王は引き続き、アンティグア・バーブーダ(state of Antigua and Barbuda)、バハマ(the Bahamas)、バルバドス(Barbados)、ベリーズ(Belize)、グレナダ(Grenada)、ジャマイカ(Jamaica)、セント・ルシア(St Lucia)、セント・クリストファー・ネイビス(St Kitts and Nevis)、セント・ビンセント・グレナディーン(St Vincent and the Grenadines)の国家元首となっている。ジャマイカも共和制への移行を示唆しており、再選されたばかりのアンドリュー・ホルネス(Andrew Holness)首相は、この提案を「壮大な国民投票」にかけたいと述べている。
バルバドスという名前は、ポルトガル語のOs Barbados「ひげを生やした者たち」という意味。これは、島に生えているイチジクの木の根がヒゲのように垂れ下がっていることに由来していると考えられている。ヨーロッパ人の到着以前、この島には南米のギアナ地方から来たアラワク(Arawak)族系先住民シボネイ(Siboney)族が4世紀半ば頃から移住していた。
参考資料:
1. Nominan a futura presidenta de Barbados convertida en República
2. Dame Sandra Mason Nominated To Be First Barbados President
3. Barbados Independence Celebrations
4. Barbados to remove Queen Elizabeth as head of state
5. Barbados revives plan to remove Queen as head of state and become a republic
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