沖縄のエイサーはご存じだろうか。これもまた夏の風物詩の一つで、国際通りを一万人の踊り尽くすのは圧巻だと言う話をよく聞く。東京の池袋を始めとし、最近は多くの場所で見られるようになったエイサーも、私自身は本番沖縄で見たことがない。それともいうのも阿波踊りや浅草サンバカーニバル(過去の写真はこちら)が開催されているからである。そして踊り子として参加しているから、その時期は遠征などでとにかく忙しく、他の祭りどころではないのである。今年は良くも悪くもそれらの祭りが中止になっている。ご存知の通りCOVID-19の影響だ。
一方のエイサーはどうだろう。そんなことを思い調べていたら「一万人のエイサー踊り隊2021オンラインINバーチャルOKINAWA」ものが開催されることがわかった。日時は9月4日午後3時からだ。
エイサーとは沖縄県で踊られる伝統芸能で、お盆に現世に帰ってきた先祖を踊りであの世に送り届けようとするもの。旧盆の最終日の夜にその盆踊りは行われる。起源は諸説あるようだが、17世紀ごろこの地で普及活動が行われた浄土宗とともに本土から伝来し、首里や那覇を中心に広まったとされている。
地元のエサオモロ(※)に念仏信仰が融合したともいわれるが、定かではない。むしろ1603年に現在の福岡県いわき市からきた僧侶 袋中上人(たいちゅうしょうにん)が現在の中国(明)を目指す途中でこの地を訪れ、その際に持ち込んだ念仏と踊りの融合を起源とする説の方が有力のようだ。ちなみに僧侶が経文を乗せたのは東北地方のジャンガラ踊りに対してだ。
当初は今のような派手さはなかった。彼の広めた念仏踊りが土着の音楽文化と融合していくうちに「琉球」らしさが出たという。そして戦後にはコンクールが始まり、その結果としてかく団体による独自色やエンターテイメント色が強まった。
沖縄の人にとってお盆は重要だ。なぜなら先祖への信仰心が強いことによる。お盆期間中、仏壇への三度の食事や線香は欠かすことができない。仏壇が家にない人々も仏壇のある家へ赴き、お中元や線香をあげたりするという。
お盆の初日は「ウンケー(お迎え)」、2日目は「ナカヌヒー(中の日)」、3日目は「ウークイ(お送り)」と呼ばれ、なかでも、ウンケーとウークイは大事な日とされる。だからこの日にエイサーが行われる。ちなみにこの二日間は供えるものも決まっており、ウンケーには果物やウンケージューシー(炊き込みご飯)を、ウークイには、三枚肉や厚揚げ豆腐、天ぷら、かまぼこなどが入った重箱を供えることが慣わしとなっている。(家庭によって差はある。)エイサーが行われ最終日にはあの世のお金「うちかび」を燃やし先祖を送り出す。
エイサーは先祖を送り出すためのもののみならず、各家の無病息災や家内安全、繁盛の祈願の意味も込められ、ジウテー(唄い手や三線弾き)の唄に合わせて踊られる。地区(字)の青年会はエイサーを踊りながら地元を巡るが、これを地元では「道じゅねー」と呼ぶ。
エイサーの楽器を代表するものと言えば三線と方張り太鼓パーランクーだろうか。謡三線(三味線)が地謡を奏で。小ぶりな太鼓でリズムを取る。エイサーの先頭を陣取るのは大太鼓、グループにはさらに締め太鼓が加わる。エイサーで一際目を引くのはサナジャーだろう。いわゆる場を盛り上げる道化師で、道先案内を務める。奇抜なメイクや滑稽な踊りは見過ごせない。ちなみに、太鼓を使わず手踊りのみのエイサーといったものも存在する。
男手踊りはイキガモーイ、女手踊りはイナグモーイという。手踊りが基本で、リズムや踊りに慣れてくれば太鼓を叩かせてくれる。イナグモーイは伝統的に絣(かすり)の着物をまとい、島草履を履いている。そして、団体を率いるのは旗頭。リズムに合わせて旗を振る。
バーチャル空間で行われるカーニバルはVR空間である「VRChat」内で行われ、アバターを通してそれに参加できると言う。当日はエイサーが見れるだけでなく、出店された屋台で沖縄の物産品をリアル購入できるという。参加費用は無料、STEAM(※)アカウントが必要。利用方法は以下のYouTubeが教えてくれる。
4日午後3時、ステージでは沖縄伝統芸能のパフォーマンスが行われ、本番のエイサー演舞は午後7時に始まる。
ヘッドマウントディスプレイやVR機器装着者は一緒にエイサーを踊ることができるというから、楽しさに拍車がかかる。他の参加者だって残念がることなかれ。空間内に設置された太鼓やパーランクーをたたいて演舞に参加することができるようになっている。これなら密を回避しながら楽しめるし、むしろ海外からだって気軽に参加できる。エイサーを知らない人にも知ってもらう良い機会となるだろう。
今年の夏はエイサーをバーチャルで体験し、パンデミックが晴れた折には現地でその腕前を披露しよう。
今だからできる事を楽しむ、それが1番だ。
エイサーを調べていたら韓流調のダンス&ボーカルグループ Chuning Candy(チューニングキャンディー)がパフォーマンスする「ダイナミック琉球」の動画を発見した。この歌自体は琉球大学の土木工学科創立50週年を記念して上演された現代版組踊(くみおどり)絵巻「琉球ルネッサンス」のテーマ曲としてイクマあきら(生熊朗)制作された。沖縄の大自然や畏敬の念を込めて本作品を作り上げたという同シンガーソングライター版を紹介するのが本筋だろうが、ここでは現代的な女性グループのものを紹介しよう。なお、この曲は夏の高校野球で仙台育英や聖光学院が応援歌として使ったり、オリオンビールのCMにも使われているくらい有名だそうだ。ちなみに私は今の今まで、この曲を知らなかった。
ちなみに沖縄全島エイサーまつり65周年記念特別動画が公開されている。(2021年9月30日まで)
※ 琉球に16世紀以前からあった集団による踊り
※STEAMとはアメリカのValve Corporationが運営するPCゲームやPCソフトのゲーム配信プラットフォーム
なお、日本国政府は琉球を先住民としては認めていない。
参考資料:
1. 【インタビュー】成底ゆう子、高校野球の応援歌として話題の「ダイナミック琉球」を大切に育ててきた秘められた軌跡
2. 沖縄全島エイサーまつり実行委員会オフィシャルサイト
3. エイサー豆知識
4. 沖縄の伝統芸能 エイサー
イベント情報:
一万人のエイサー踊り隊2021オンラインINバーチャルOKINAWA
HP: https://virtualokinawa.jp
開場:2021年 9月3日(金)18:00~
開演:2021年 9月4日(土)15:00~
価格:無料
会場:バーチャルOKINAWA(VRChat内)
バーチャルOKINAWAチュートリアルはこちら
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