前回Datumの調査結果を共有したのが4月24日。そこから約2週間と少し経ち、ペルー大統領選挙における支持率がどう変わってきただろう。前回の調査では49%の人々がどちらの候補に投票するかを決めかねており、ゆえにこの票をいかに取れるかが重要だとしてきた。
まず端的に言うと両者の差は5ポイントに縮まった。前回4月27日〜29日に実施した調査ではPerú Libreのペドロ・カスティージョ(Pedro Castillo)が43%だったのに対し、Fuerza Popularのケイコ・フジモリは34%でその差が9ポイントあった。白票を投じる人、まだ決めていない人の数が変わっていないことを思うと、ケイコが躍進を見せたと言うことになろう。なお今回の調査は5月6日〜7日に行われた。
差が縮まったのは何によるものなのだろうか。5月1日カハマルカ(Cajamarca)のチョタ(Chota)で行われた両者におけるディベートをケイコの勝ちとしている人が多いことから、これが影響しているのだろうか。なお、ディベートを受けて投票者変更を予定しているのは全体の4%のようだ。
以下にペドロ・カスティージョとケイコ・フジモリのYouTubeも共有しておこう。
テーマは健康、教育、経済、安全保障、汚職との闘いなど、5つに分かれている。
全動画はこちら(YouTube)。
今回は経済対策については触れよう。
カスティージョはペルーにおいて70%の利益を得ている多国籍企業との契約の見直し、一刻も早い観光産業の回復、零細企業家への支援を打ち出した。具体的にはBanco de la Naciónによる債権買取とローンを提供することで、低金利で企業はお金を借りられるとした。また、金、銅をはじめとした鉱物資源はペルー人のためにあるべきだと強調するとともに、国内で作っているものの輸入を停止することで雇用創出を計るとも言っている。また、2回目の農業改革の実施などを約束した。
一方のケイコは極貧状態にある高齢者に対する支援(年金65)を倍額にすること、鉱業による利益(使用料)の40%を地元に直接配布すること、中小企業所有者に対しては彼らの債務の購入や、国が購入した40%を同じ中小企業に割り当てることを約束し、また、低所得者層に対する高等教育支援のための奨学金Beca 18の拡張も宣言した。なお灌漑の整備をはじめとし様々なプロジェクト立ち上げで200万人の雇用創出を狙うとともに、選択的消費税の見直しによるより安価な燃料の提供を約束するとともに、農業従事者に対してはより良い種の提供や500万台のトラックの導入などを主張した。
経済対策の話ゆえ「金、金」してしまうのはどうしようもないとは思いつつ、ばらまきにも近いこのような対策がサステイナビリティのコンテキストから語れるのかは、若干疑問に感じるところではある。財源は無象にあるものではないし、むしろCOVID-19で傷んだ社会をどう立て直すかという観点も必要な気がする。
もちろんCOVID-19対策についても本討議で語られた。カスティージョがペルーにおけるパンデミックは新自由主義モデルによって発生した医療制度への弊害によるものだとした。ケイコは感染予防のためにも1日で7万件のPCR検査の実施と、病院における病床やICUを早急に増やすことを約束した。なお、両候補ともロシア製ワクチンの早期入手にむけ大使館と交渉をしていることを明かした。
5月1日の討論内容に基づきディベート・ミュージカル動画もアップされていたので共有しておこう。
ディベートは予定から30分遅れで始まった。ケイコが遅刻をしたからだ。前日ハエン(Jaén)入りしていたものの、チョタを結ぶ道路が崩壊したことから、チクラーヨ(Chiclayo)経由でカハマルカにに入らなければならなかったという。ケイコが会場に到着するまでに11時間ほどかかったというが、この遅刻がケイコによって仕組まれたものかどうかはわからない。
選挙まで残すところ3週間、5月1日以降にもまだ4つのディベートが予定されている。(1つは技術チーム、もう1つは副大統領候補者、2つは大統領候補の討議。)次回の討議でもどのようなことが話されるのかしっかりと見ていくこととしよう。なおPerú Libreは残す4回のディベートのうち、1つしか参加を表明していない。
5月1日当日の流れはこちら(RPP)を参考のこと。
参考資料:
1. 記憶:アンデスの国ペルーへのアプローチ
2. Debate presidencial en Chota: ¿Qué propuestas tienen Keiko Fujimori y Pedro Castillo para la economía del Perú?
3. Un nosotros que divide: reflexiones sobre el debate de Chota
4. ペルー情勢レポート 「水か、金か」ウマラ政権にとって最初の試金石
5.Un debate improvisado en el Perú rural no saca de dudas a los peruanos
No Comments