マダガスカルと聞くとディズニー映画の影響から、すぐにワオキツネザルを連想する人もいるだろう。疑いようもなく、この土地を代表する人気者で、皆その生活を見にやってくる。
でもこの島に生息するキツネザルは1種類だけではないことはご存知だろうか。キツネザル(の仲間)だけでもここには固有種が111種も存在し、生活をしているのである。まさに奇跡の島であり、キツネザルたちの島とでも言えそうだ。
とは言え、残念ながらその9割超が絶滅の危機にある。疑いようもなく、いつのまにか共生することができなくなり、動物たちの住処を奪い、彼らの生活に侵入した人間がその原因だ。焼き畑農業や違法伐採などによる生息環境の破壊と劣化で住む場所を追われたキツネザル。さらには密猟という形で、彼ら自身もまた商品と化し狙われるようになった。
シマシマ尻尾の人気者ワオキツネザルや小さな小さなピグミーネズミキツネザルなど全種が住処を失い、カンムリキツネザルやゴールデンクラウンシファカは大金持ちの食料として売買の対象となっている。
このような事態は2009年3月に発生したマルク・ラベロマナナ(Marc Ravalomanana)大統領退陣を求める軍事クーデター後に加速した。外部(世界銀行や米国政府など)からの資金援助に全面的に依存していた国立公園の保護管理が、国内の政情不安による資金流入を停止させ、その結果として自然保護を行うための人材を完全に奪ってしまったのだった。
長い間、この島で生きてきた重鎮が人間と出会い、人間の覇権争いに巻き込まれてしまったことで種の危機にさらされる。人と動物との共存についてはこの土地だけでなく、世界中どこででも問われている問題だ。
しかし、生物の多様性に富んだマダガスカルにおいては、早期解決が必要な問題であり、それができなければ、彼ら自身の命取りともなりえよう。
なぜなら、マダガスカルの豊かな自然こそが、外貨獲得のための観光資源であり、そして、このダイバーシティこそが彼らしか持ち得ない、我々地球人にとってかけがえのない財産だからである。
「マダガスカルはこの地球レベルでの問題に対していかに立ち向かうのか。」
これに対するヒントはタイム・アンド・タイド財団が持っていた。
彼らは専門家や地元住民と連携し、カンムリキツネザルを本島からノージー・アンコ(NOSY ANKAO)に移住させ、そこでカンムリキツネザルの保全とともに、コミュニティに根ざしたエコツーリズムを提供している。
最初に連れてこられたカンムリキツネザルのおとな4匹と赤ちゃん1匹は食性のおかげもあり、すくすくと育ち、今ではテクノロジーの力も借りながら安全を確保され、その生態記録を提供している。
生物を危機に犯すのも人であれば、それを守ることができるのも人なのである。
タイム・アンド・タイドによるこのプロジェクトの最終目的は移住してきたキツネザルを、元の土地に戻すこととしながらも、エコツーリズムをマダガスカルに定着させることで、この国が自然の大切さに気づき、より魅力ある土地として発展していくことをもミッションとしているようだ。
次行くときは、タイム・アンド・タイド・ミアヴァナ(Time + Tide Miavana)にも立ち寄ってみたいと強く思うのであった。
なお、伝説の人とされるノーマン・カー(Norman Carr)によるタイム・アンド・タイドは、すでに70年もの歴史を持ち、ザンビアにおけるコミュニティ保護とサファリ体験をという成功経験があるという。
Time + Tide のホームページはこちらから。
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